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渋谷クリスマス会、ほんとにあった話(4)

大人数が入れるような場所を借りて、クリスマス会をやろうかな、と考えた話。
渋谷クリスマス会、ほんとにあった話(1)
渋谷クリスマス会、ほんとにあった話(2)
渋谷クリスマス会、ほんとにあった話(3)

の続き。

自分の力なしに、会場が抑えられ、司会者が与えられ、プロの演奏家が与えられた。
次に、メッセージをする話者が欲しい。
10代からの知人に依頼を送ったが、返事がない。


(メール、届いてないのかな…)



しかし数日後、返事が来た。



「しばらくこのことについて、祈ってました。午後に会社を休んで、会場へ伺います。」


メールにはいろいろ書かれていたが、そんな主旨だった。
私は彼の人柄に思いを馳せ、10代から変わらない清々しさや、誠実性に嬉しくなった。そして、考えた挙句、引き受けてくださったことに胸が熱くなった。確かに、頼まれる方の負担は重い。しかも子供を相手に喋すのは難しい。加えて、この年はクリスマス=ビジネスアワー(平日)だった。




かくして、司会者、演奏家、話者と、豪華メンバーが揃った。
おまけに、断ってきた、”楽器を練習中の知人”も、プロが出るならば私も出る、と連絡が来て、さらに賑やかになった。




さあ、当日。
私は未だかつてやったことのない試みに、緊張で眠れず、かなりテンパっていた。私もまた、午前中に仕事だったが、正直、その日はほとんど上の空で働いた。家から持っていく荷物の多さや、進行スケジュールと司会者の台本書きなど、家では大騒ぎだった。


見かねた主人は、「何か困ったことがあれば、いつでも、連絡してね」と言って職場に出かけて行った。



それで、話がおかしいのは、実際に困ることが起こってしまうことである・・・!

お客さんを迎える前、ボランティアの劇団さんと会場準備をしていると、司会者に「これだけは用意して」と頼まれていたプロジェクターと、司会者のPCをつなぐ、ケーブルコードがない。プロジェクターは劇団さんが持ってきてくれたが、ケーブルが抜け落ちたのであった。

どうしよう!みんながもうすぐ来てしまう!
人はどんどん、集まり始めていた。


私は仕事中の夫に申し訳ない、と汗をかきつつ、急いで電話した。
「ごめん!ケーブルがないの!!!」



渋谷で働く夫は、経営者だ。サラリーマンと比べ、勤務時間の融通が付きやすい。
とはいえ、打ち合わせや外出など呼ばれてすぐ出られるわけではない。けれども、この日は職場にいたので、すぐ飛んできてくれた。



私はその頃、すでに受付で、いらしてくださる方を前に忙しくしていた。
夫へのお礼もなしに、
「あっちへいけば、何がどう困っているかわかるから」
と顎で場所を示して、行くよう促した。


彼は、言われるまま、そこへ行った。

(つづく)



by桜子