man comfortably sitting on a couch

ワーホリでニュージーランド歴7年のYOU!

家族で渡航したニュージーランド最大都市オークランド。ニュージーランド人口の1/3が住むと言われるこの街に、コネなしで来たわりには、知り合う人が増えていく…。

ということで、聞いた話を独り占めするのはもったいない!ブログ開設時の初心に帰り、単身突撃インタビューを再開。初回ゲストはニュージーランドのオークランド在住歴7年のカズさん(独身・39歳)。



 ニュージーランドで最安と言われるスーパー、パッキンセーブに来て驚いた。広い。イケアの倉庫や、コストコなみ、といえばイメージは伝わるだろうか。
 しかしそれ以上に驚いたのは食べ物の値段だ。レタス1個580円、卵12個入り800円。わが家の懐が痛い。しかし、どれも大事な栄養素。我慢するわけにもいかず、慎重に買い物をした。
 
 慣れとは恐ろしいもので、滞在2か月もすると目が慣れて、値段にも驚かず、時にはこれはお得だと買い物ができるようになっていく。もっとも野菜の値の高さはニュージーランド人も感じていた。店員に向かって『なんで、このレタスはこんなに高いの!』と叫ぶ女性を見た、と夫は言う。

 そんなある日、ママ友から「スーパーAの野菜が安いよ。私よく出かけているよ」と勧められたので、子供を学校へ迎えに行った足で、車を走らせた。
 
 Excuse me…is this…?と店員へ私が話しかけると、「ええ、それは…」と予期せぬ日本語が返ってきた。なんと初めて見る、働く日本人だ。彼は店員ではない、と説明しつつも、一生懸命に対応してくれただけでなく、その後に続く、私の素朴な疑問にいつまでも、いつまでもついてくる。それで、彼が永住権を持って在住7年の独身男性と知るわけだが、問題はこの後の会話である。

カズ
「僕、日本人の友達いないです。
ニュージーランドの友達もいないです。会社と家の往復です」

桜子
「え?じゃあ、土日は何しているんですか?」

カズ
「暇です」

桜子
「寂しくないですか?」

カズ
「寂しいです」


 その素直すぎる答えに私は返す言葉を失った。ふと顔を見上げると、遠くで夫がこちらを見ている。その顔には(何、油をうってるんだ?)と書いてあったので、私は彼に別れを告げた。



約2週間後。土曜、気持ちの良い青空を眺めていたら、朝ふっとスーパーAの彼を呼ぶ案が閃く。我ながら変だと思いつつ、夫に奇妙な提案をしてしまう。

「今からうちへお茶に誘うのはアリかしら?」

私の予想に反して夫は言った。「いいよ」

とはいえ、本当に実行に移すと思わなかったのか、「いらっしゃることになったよー!」と私が叫ぶと、家族は皆、目を丸くしていた。カズさんの許可をもらい、その話を書く。


桜子:
ニュージーランド滞在歴7年のカズさん。なぜニュージーランドに来たんですか?

カズ:
ニュージーランドに移住した男友達がいて、彼に誘われたんですよ。僕は当時、金融業界で働いていて、ワーキングホリデー(以下、ワーホリ)で来たんですよ。

桜子:
あれ、ワーホリが使えるのは30歳まで、でしたよね。年齢の計算が合わない気が。

カズ:
あれは、申請時の年齢なんです。それまでに申請して、渡航したのはその後だったので。

桜子:
なるほど。あの、さっきの話。
若干、巻き戻して聞きたいんですけど。振り返ってみて、なぜニュージーランドに来たか。何がカズさんをこちらにこう、行かせよう、と思ったのか?

カズ:
えー…。(もぞもぞ)

それ言うと身も蓋も夢もない話なんですけど…。
僕、彼女に振られて(笑)。
そこが一番大きくて。
遠くに行きたい。遠くに行きたかった・・・。


一同、笑い。

夫 :
傷心旅行!(笑)

カズ:
本当にそうなんです!(笑)


YOUは何しにニュージーランドへ?ワーホリをするためなんだと思っていたけど、答えは全然違った。
ただ遠くへ、彼女のいない所へ逃げたかった。それが、たまたま、この地だったとは。


桜子:
その答え、最高だな、すごいよ!(笑)

カズ:(笑)
仕事も合わなかったんですね。
僕はなんで金融業界へ入ったかと言えば、大学4年の時に「みんななでお金を出し合って困った人を助けるのが金融業界なんだ」という説明会の綺麗事に感動したんですよ。頭の中がお花畑でした。
でも世の中、そうじゃない。集金しなきゃいけないし(笑)
なんかしんどい、つらいなと。
でも結婚したがっている彼女が居たから、頑張ろうと思っていた。それで頑張って、そうじゃなくなった。
一回バージョンを変えないと。

夫 :
それはリセットみたいなこと?

カズ:
そうです。それで、ニュージーランドに移住した友達が誘ってきてくれた。
「気分転換にニュージーランドはもってこいだよ」と。
「それにワーキングホリデーだから、ホリデー(休み)で来たらいいよ」と。それで来たんですけど。でも、今、何で居続けているのか…。


一同、笑い。


カズ:
ホントは仕事をあまり真面目にやるつもりもなくて、遊びに来たって感じだったんです。
でも一緒にフラット(共同生活)で住んでいたニュージーランド人に、お前は毎日家で何やってるんだ!と。

夫 :
ハハハ

カズ:
国で両親が泣いているぞって怒られて(笑)!

桜子:
アハハ!


永住権を取りたくて来たわけでもないカズさんは、この後どうしたら、と思っている。
自分でも何がしたいのか分からない、と正直に語るカズさんは、あともう少し働けば、今度はオーストラリアでの仕事もできるようになる、ということで、これからも、流されていくのか。


結局うちで1、2時間お茶するつもりが、気づけば時計の針は4時間を超え、
「また会おうね」と別れたYOUが、これからどんな人生を送るのか、目が離せない。



by桜子