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フィンランド式精神医療、オープンダイアローグ(開かれた対話)④

 ■ここまでのストーリー■
精神科医の森川すいめい氏から、オープンダイアローグの型を教わったワーママの私。先生の講座は、他のビジネスセミナーと全く違う。違いは、フィンランド式精神医療、オープンダイアローグ(開かれた対話)③へ。



さて、実践の様子を、より具体的に書いていく。

外見や、喋り方に、まったく圧がない、森川すいめい氏。
ホワイトボードに、「ダイアローグ」と、先生が書いたら、何人かの女性がくすりと笑った。
休憩時間には、写メを撮る人が何人もいた。
なぜか。

彼女らへ質問すると、「なんか、撮りたくなって」と笑う。
みんなは、先生を知っているのか?それとも、その文字が先生にしては、あまりにも大胆な書きっぷりだったからか?今となれば、私も写真を撮っておけばよかったと思うが、その文字はなんと、あんなに大きなホワイトボードだったのに、先生は文字を大きく書きすぎたために、横一文字にならず、「グ」だけ、下になってしまったのだ。

この面白い先生の話をしていては、先に進まぬ。
さて、次へ行こう。
実践へと場が移った時、先生は、ペアになった私たちに注意を与えた。Aが話し、Bへ交代するけれど、その合図はしないので、自分でやってみて、と言う。

 合図なしの姿勢は、その後も終始貫かれ、何を練習しても、終わりの号令がかかることはなかった。セミナーたるもの、時間通りの進行は必須だが、休憩時間のときさえ、先生は終わりの声を発しなかった。

では、どうやって終了を周知するか?

答えは、サイレントベル、だ。

先生が挙手をする。それに気づいた参加者は、手を挙げる。一人、一人と、それが増えると場が鎮まる。ザ・サイレントベル、音が鳴らないベルだ。


さて、この合図なしは、私を不安にさせた。
時間通りにできないと、周囲に迷惑をかける。今まで何度も時間には追われてきたよ。
そもそも、先生だって、進行上、困るでしょう??
仕切ってくれれば楽なのに、と思った。

「えっと…皆さんで…やってみたいと思うのですが…ここまでで…何か…言いたい……っていう方は…います…か…?」


私は思い切って手を挙げた。

「これって、傾聴力の訓練だと思うのですけど、合図がないと、私は時間内に終わるか不安です。ドキドキします」
と、私は言った。

自分の不安を伝えたのは、先生は結局のところ、ファッションも、トークの仕方も、態度も、全部、相手への配慮で、威圧感を与えず、安心感を与えるためだ、とだんだん気づいたからだった。
そのため、もし、私に不安があると伝えたら、そうしない理由を解説してくれると期待した。が、またもや、私の予想を超える反応をした。一言一句は忘れたが、反応はだいたいこんな感じ。

「ほう……傾聴力…。そう…ですか…。意見を…どうも……ありがとうございます…」と、なにやらうれしそう。(マスクなので分からず)

「そうですか…。ええっと……、それは…」

と、周囲を見渡し、隣の違う先生(※明日詳細を書く)に話しかける。

お礼を丁寧に述べる先生にやや面食らいつつ、私はどう判断されるかとドキドキした。
だが、傾聴力には触れず、なんだか嬉しそうに反応して、ゆっくり、ゆっくり、口を開いて、いろいろと脱線しているような感じを見せながらも(たぶん、脱線してなかったが、私は即答を期待していた)、最終的には、こんなことを言った。

「余裕をもって……いるので…(たとえ時間が長引いたとしても)大丈夫…ですよ…」


ああ、そうなんだ、そういうことなんだ。私が不安を覚えても、このサイレントベルはどうやら非常に大事らしい。

⑤へ続く