クリスマスにもらったノーマンロックウェルの絵本がとても良かった。添えられた文章を編集し、一話お届けする。
「The real winner」
知的障害者のオリンピックでの出来事だった。
9人の選手が白線に並びスタートを待っていた。徒競走のピストルの合図が鳴り、選手達はいっせいに走り出した。
ところがランナーの一人が途中でつまづき転んだ。
転倒した選手は痛みが走り、彼の胸は失望で破裂しそうだった。感情がこらえきれず大粒の涙がこぼれた。他の選手も鳴き声を聞きつけ、一人また一人と立ち止まり、彼の元へ戻り始めた。
他の選手でダウン症の女の子も彼のそばにやってきた。
彼女は「転んでも負けじゃないわ」と言って、ひざまずき彼に優しくキスをした。
彼は立ち上がった。そして他の選手達と手をつなぎ、一緒にゴールに向かって歩き出した。彼らがゴールしたとき、スタジアムの観客は立ち上がった。そこにいた人はみな、改めて思い起こしたのだ。他の誰かを助けることこそ、人生における真の勝利者であり、自分のために勝つことよりも大切であることを。
スタジアムには長い拍手が響き渡っていた。
「私には、幸せを与えることは、それを手に入れることよりも崇高に見える。さらには、自分が天国に行くことよりも、他の人が行けるように手助けすることの方が重要なのである」(ルイス・キャロル)