日別アーカイブ: 2023年2月22日

Season2:ニュージーランドの家探し~最終回

コンビニのサンドイッチに挟まれた、うっすーいレタス。
味も定かでない、その薄いレタスが、私には今回の家探しによく重なる。


不幸な日々は、ハムチーズとパン。
その中に垣間見える幸せは、薄いレタス。
苦しいニュージーランド生活の毎日にうめきや悲しみは満ちていたけれど、慰めや喜びも微かにあった。

細かいことを、取り上げればキリがない。
後半のエピソードは省略するが、先週も朝になって、今夜泊まる家がない状態に再び襲われた。

「車中で寝ればいいよ」と腹をくくった時、スマホを触り続けていると、誤って私に予約完了の通知が来て、泊るつもりのない家が手配され、5泊した。(※そこは、主人が、この家だけは泊まりたくない、と考えた場所だった)



1月からの滞在履歴を振り返る。
①主人の友人宅(悲劇の始まり)
②オークランド郊外プケコヘの家(東京でいう伊豆みたいなとこ) 
③エヴァとジョンの家(地獄ふたたび)
④オークランド空港近くの家(寒さで主人と娘がダウン)
⑤グレンイネスのホテル(最上級の部屋と台風)
⑥セントジョーンズの平屋(泊るつもりのなかった家)

娘は最後の方になると、朝、「今、自分はどこにいるのか分からない」と起きてきた。
移動の度に、スーツケースを抱えて荷ほどきし、荷造りしては車に乗る生活を、娘はどのように感じただろうか。
彼女もよく、ついてきてくれた。


このたびの苦しみについて、私の学びを一つあげる。それは、コレ。

神様は私たち人間を、徹底的に、限界まで、あなたの力の限り、頑張らせる


信仰があれば、祈っていれば、穏やかな生活になるはず、と思っていた。
「ニュージーランドに行ったら暇だよ~」と夫に言われて、日本から書籍をたくさん持ってきた。どれも、この生活では重荷でしかなかった。


以前、ニワトリが卵を産む話を書いた。
私はその時、私の脳裏に浮かぶ「小さな家」が必ず与えられる、という強い確信に満ちていた。
だから、大喜びした。

けれど、実際には、その家は与えられなかった。
わが家と同じ留学生の親子が長期滞在だから、と契約が成立し、私たちはその知らせを悲しく聞いた。


だけど。



Are you ready?


さあ、今の住まいをお見せしましょう!!!

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※これはイメージです


23年2月21日、私たちに「完璧な一軒家」がついに与えられた。

Airbnbの家じゃない。
海まで徒歩3分(計算外)の、4LDK、家具付きの一軒家。
娘の学校まで徒歩20分、車なら4分。娘の個室、夫婦の寝室、主人の仕事部屋までついている。




ああ、これはいったい、なんということだろう。
家具付きの一軒家が、短期移住なのに、オークランド洪水で家屋は不足気味なのに、とうとう与えられたのである。



私は初日、怖くて怖くてたまらなかった。
どうしよう、また何かある気がする。
怖い。



まだ心臓がドキドキするの。

ちょっとお茶を飲みましょう。

そして、一つづつ、一つづつ、新しいことをしましょう。
ガスのつけ方、洗濯機の使い方、新しいことを覚えるのに、まだ脳が追いつかないから。

今日は食事は作らないわ。

主人にそう言って、初日は大きな家で静かに寝た。



2月23日、天気は晴れ。

私の心も、まだ不安はあるが、確かに晴れている。

「そりゃいい!すべての栄光を神に返せ!」と私に言ったニュージーランドの友人と、神様へ。



私は今、すべてのご栄光をあなたにお返しします。



by桜子

Season2:ニュージーランドの家探し~短期移住12

イモトさんと仲良しの登山家、天国じじいこと、わが叔父の貫田宗男に連絡をした。
あまりにも、ニュージーランド生活が辛くて。

※良かったらご覧ください(Season2:ニュージーランドの家探し~短期移住5


私 「いま、どこ?」

宗男「カトマンズ。2/15〜5/24までネパール」



以前、おじにNTTコミュニケーションズの仕事で、インタビューに応えてもらったことがある。その際、叔父は確か、「年間1/3は海外」と言ってた気がする。そうだ、叔父に生きる知恵をもらおう、と私は考えた。


私 「海外生活ってやっぱり大変だね。私たちトラブルたくさんある」

宗男「どこも慣れじゃない?住めば都。
   トラブルは解決する喜びがある・・・。
   三浦雄一郎さんの病気や怪我は治す喜びある・・・の真似。
   私はトラブルを飯の種にしています、笑」


そこで話が終われば文章として綺麗だが、叔父は続けてこう言った。
「トラブルがないと自分の存在価値がない」

んんっ?!
いや~。だったら、テレビにも出てない一般人の私は、もっと存在価値がないですけど、と思いながら今回のトラブルを回顧すると、存在価値が出てきているのかな…と考えた。

最近、会う人、会う人に、私たちの近況を話すと非常に驚かれ、
「本にしたらいい」と言われる。
それはニュージーランド人にも、中国人にも、日本人にも、言われた。


「私、ブログ書いてるから、そこに載せているんですよ」
というと、

「そりゃいい!すべての栄光を神に返せ!」
と、教会の人は言った。


私たちの家探しの旅を、そろそろ収束にもっていかねばならない。
現実世界は、23年2月21日だ。

私たちはオークランド空港近くの家に移っても、相変わらず連日の悲劇は続いた。
・エアコンの故障
・(上記により)娘が発熱し、学校を欠席、主人も具合が悪くなる(涙)
・(上記により再びAirbnbで家を再検索し、引っ越し)夫の下着全部を置き忘れる(涙)
・新しい家のテレビが故障
・翌日、洗濯機を動かすと破水し、床が水浸し(涙)

これらに加え、父に難病の可能性があると言う知らせが届いた。
大学病院で検査し、22日に結果が分かるという。

これには参った。
が、目の前の主人もまた、難病ではないが、差し歯が一本外れて、数日前からクリップの鋼を使って何とか接着させようとしては失敗を繰り返し、食事に難があった。



ニッコリ笑う、主人の前歯が一本ない。
申し訳ないけど、滑稽である。

なんと惨めな笑顔だろう。
でも私は、不思議と彼の顔を見ても、情けない、とか、かっこ悪い、とは思わなかった。

むしろ、困難がどれほどあっても、平静であり続け、最善の努力を日々重ねる夫を愛おしく思った。

人から見たら、滑稽かもしれない。
でも、私はそんなこと、どうでもいいや、と思った。
歯がなくなったって、死なないんだから。


私たちはみな、ひとりひとり、命が与えられている。
その素晴らしさの方に、天を仰いでいた。


by桜子