Season2:ニュージーランドの家探し~短期移住9

「一か月でそこまで経験しましたか…。僕はここに30年いるけど、そんな経験したことがないなあ…」

colleagues having a conversation at an office
(イメージ写真)


と、NZ在住の方に、夫が今日、言われた。


で・す・よ・ね?



私はたまに思う。
もし出発前、こんな悲劇に襲われることを知っていたら、絶対にニュージーランドに来なかった
と。



「わたしがしていることは、今はあなたにはわからないが、あとでわかるようになります。」
(新約聖書ヨハネ13:7)と、数日前、父が私に言った。

そうかな?
そうかな?
と思ったが、

今日思った。

私は久しぶりに10時間、眠れた。

それで今、生きている。
あんなに苦しい思いを経験したのに、私は今、生きている。
なんだ、大したことないじゃないか、生きているんだから、と、ほんの少し思えた。





さて、本日の本題、ニュージーランド短期移住のきっかけの続きを書く。

<これまでのお話> 
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1月02日: 東京からオークランドへ。主人の友人宅に滞在するも、第3週に退去。
  22日: オークランド郊外へ脱出し、Airbnbの家に9泊。
  31日: 今夜の住まいが見つからず。
    1日になるまで残り8時間の所で、ジョンとエヴァの家が与えられる。

2月02日: キッチンの台を熱い鍋で焦がしてしまう。
  08日: ジョンが、キッチンの修理費用を3社見積中と言ってくる。
10日: ジョンが、私たちの宿泊費を修理費用に返金しないと言う。
    私は疲労困憊で涙が噴き出る。
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Season2:ニュージーランドの家探し~短期移住8の続き。

ニュージーランドに来てから、ともかく朝が辛い。

なぜ辛いかと言えば、希望がないからだ。
安心して暮らせる家がないと、人は希望を失う。
生活空間に、楽しみをつくり出せないと、外出か、早く夜が来て寝るしか、希望がない。

住み心地の悪い家に住むのが、人にとってどれほどの害悪か、嫌というほど学んだ。


私は目を覚ましたくなかった。
起きたら、現実と向き合わなくてはならない。
それでも娘の制服を洗ってやりたかった。
しばらくして、のろのろと起き上がり、階下の洗濯場へ行くと、ジョンが来た。

「今日来た修理業者、見積金が思いのほか安かったよ」と喜んでいる。

私は普段なら、ジョンが話しかけると、忠犬ハチ公みたいに、すべての作業をやめて傾聴したが、この日は違った。


(知らんがな・・・)
と思った。


(いくら見積が安かろうが、私たちが払ったお金は返さないんでしょ)
と思った。

そう思うと、もう正直に言ってやれ、という思いが出て、私は言った。


「来てからずっと、あなたの奥さん、怖かった。私が機嫌を良くしてもらいたい、と思って話しかけても…」と訴えると、またもや涙腺が潤んだ。


私たち家族は、どちらかと言えば綺麗好きだ。
埃だらけの家を滞在2日目には綺麗に掃除機をかけて、テーブルを拭いた。

満額の滞在費用を払い、光熱費も、共有スペースも、利用する権利があるのに、
節水して、遠慮して、我慢ばかりして、我慢ばかりして、と、思ったら、もう悲しくて泣けてきた。

すると驚いたことにジョンは、「僕でさえ、妻に手を焼いている…」と言う。

「昔は、彼女、ああいう人じゃなかったんだ。今は、分かるだろう?彼女の年齢だから。君がこの地で頑張っているように、エヴァは今、闘っているんだよ。農場とこことを行ったり来たりして、自分と闘っているんだ。」


要するに、更年期ってこと?


と私は思った。
が、家主が更年期でイライラしている、という情報は、さすがに私、分かんない!!!!
お手上げだった。



そして、ジョンは最後に、こういった。

「今日で、この家と最後なんだから、思いっきり素敵な日にしなくちゃね」

彼なりに、私に愛を送ってくれていたと思う。
そして、私も、「そうだね、そしたら今夜ステーキでも焼こうかな」と言ったが、
私はもう二度と台所で調理するのはごめんだった。

そして、それ以来、彼の姿を、二度と見なかった。



by桜子