英国スーパーマーケット(2)

 ”How kind you’re!”の感嘆文はこういう場面で使うんだな、と中学英語を思い出しながら、「ありがとう、ありがとう、あなたはとても親切な人ですね!私はなんて幸運でしょう!」とひたすらお礼を言った。

 まるで、テレビ東京の『田舎に泊まろう・イギリス編(現在は放送終了)』みたいだな、と思いながら、番組の主人公になった心境だった。思い起こせば、見知らぬ人の車に乗ったことは(確か)なかったはずだが、番組を見慣れていたせいか、よそ様の好意に甘えない選択肢は皆無だった。

 そして、海 ---海だよ、海が見えたよ。

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 「1,2,3」と私はカウントすると、脱兎の如く、彼女の待つ車へ戻った。
 送ってあげる、といったアンは、私を待っていた。

 なぜなら、海まで行く道中で、私たちはこんな会話をしたからだった。

 
 「ところで、もし私と会わなかったら、あなたは何をする所だったんですか?」

 「車でスーパーへ行くとこだったわ」

 「・・・ということは、このあと・・・?」

 「スーパーよ。スーパーへ行くわ」

 「私、実は海とスーパーのどっちへ行こうかと悩んでたんです!」

 と話し、「ほんの数秒間だけ海を見たらすぐ戻ってくるから」
 と約束して、車が止まった瞬間すぐさま海へと走り出すと、
 数を数えて、駐車場へと駆け戻っていったのである。

 神様、ありがとう、ありがとう。
 私はどちらか一つを選場なくては、と思ったのに、
 あなたは私にその両方を与えてくださいました。

 
 
P1020800.JPG ショッピング籠を手にするAnn
(※ショッピング籠は手で持てるほかに、写真のように片側の取手を伸ばしカート使用も可)
P1020801.JPG お洗濯の色分けシート
(※この紙を一枚洗濯機の中に入れると、白い服に色物の服を混ぜても色が移らないという優れものだとか。円換算して約500円也) 

P1020804.JPG お菓子。
(ついついこういうのは食いしん坊で撮ってしまいます)

 そして、最後にアンはこう言った。

 「さっきから話を聞いていると、もしかしてあなた、
  スコットさんちに泊まってるんじゃない?
  スコット夫人は良い人よ。私たち、仲が良いの。
  彼女には娘さんがいたわ。娘さん、病気よね。
  ふだん滅多に外にいるのを見ないけれど」

  アンとキティ・スコットのご近所事情が分からなかったから、私はずっとキティの名は伏せていた。が、関係が良いと聞き、戸惑いながらもええ実は、と事情を簡単に話した。

  「初めて日本からこんな田舎まで来て家にいるのは勿体ないわ。
  私はもうリタイヤした人間だし、時間はたくさんあるの。
  そうだわ、明日私が車で観光にでも連れてってあげましょうか?
  大きなショッピングセンターがあるわよ」

 私はアンのほっぺにキスしそうになった。最高だ、と思った。

(つづく)

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