「わたしに何をしてほしいのか」 新約聖書(マルコ10:51)
人は誰もが、生きている意味や、今日ここにいる理由を知りたいと願う。
何気ない暮らしの中で、ふと訪れた場所でさえも、そこに導かれた確かさを感じると、心が震える。
自分が人生という大海原の中で、確かに創造主に見守られている——
その喜びと言ったら、ない。
私は、夫が「タナカヒロカズ」という名の妻である。
渋谷で過去に何度か、ギネス世界記録大会があった。
先月、それが行われて、さんざん祈った結果、行った。その経緯は以下の通りである。
1:同姓同名集結ギネス記録ならず、アナザーストーリー①祈った朝
2:同姓同名集結ギネス記録ならず、アナザーストーリー②|渋谷で広がるつながり
3:同姓同名集結ギネス記録ならず、アナザーストーリー③|開場前の拍手と、私の結婚
今日は、その最終話。
* * *
とうとうギネス世界記録会場の扉が開いた。
入り口は、一般の方と、タナカヒロカズさんの二手に分かれている。
今回ギネス世界記録のために、事前にギネス認定員の方々が、 会場入りしていた。
タナカヒロカズさんらは、ひとりひとりのIDと証明書を丁寧に確認されながら、
承認されると、ゼッケン番号をもらい、胸に貼っていた。
続々と皆さんが流れる様子を見守っていたら、 しばらくして、
タナカヒロカズさんのご家族と思しき、女性が私のところに来られた。
「証明書にフリガナがなくて、名前の証明ができないんです…。 残念ですが…帰ります」
ふと奥を見ると、年配の男性が椅子に座っておられ、その周りに3名がいらした。
遠方から付き添いとして、駆けつけておられた。
後で知ったが、この方が最高齢で、「新幹線のタナカヒロカズ」だった。
彼の呼び名の由来は、前回のギネス認定大会だ。
お住まいが遠方で、人生で生まれて初めて新幹線に乗って会場に来た。
そんな説明を聞いて、命名された名が、「新幹線」であった。
悲痛な顔をして、今度は、そばにいた男性が仰った。
「コンビニに行って、住民票を取り寄せようとしたんですが、 パスワードが違ってロックがかかっちゃって…」
見ると、そのお顔には、泣きたいと書いてあった。
手に取るように、彼らの困りごとが分かり、私も胸が苦しくなった。
瞬間的に、私は言った。
「ちょっと待って、私、交渉します!」
こんな苦労があってなるものか。ギネス認定員と交渉するしかない!
だが、ごねてくつがえるとも思えない。
さて、どうすれば?
ーー何か、何かあるはず…。
彼が間違いなく、タナカヒロカズである証明が何かある。
脳内の検索エンジンを、私は最大限にかけた。
そうして、閃いた。
頭に浮かんだのは、私のブログ。
そうだ、 今朝書いたブログに、ギネス認定時の写真を載せたけど…
携帯を取り出し、ブログを探した。
「ここに、ここに、あなた様の顔は載っていませんか?!」
「あ、ここです。ここにおじいちゃんが!!」
責任者に駆け寄った。
事情を説明した。
「オーケーです」
信じられなかったが、認められた。
温情もあったに違いない。だが、彼は過去に新聞紙面にも取り上げられたそうだから、嘘ではあるまい。
全員が安堵のため息をついた。
かくして、新幹線さんは、舞台に立った。

この日、祈って参加した私。 しかも、役に立ったそれが——このブログ。
神がちゃんと、私を導いて、私はここにいるんだと胸が熱くなった。
ここにいるのは偶然ではなく、必然だった。 その確信が深まり、嬉しかった。
* * *
後日談:
①翌朝、メールボックスを見ると、読者の方からメッセージが届いていた。
「いまテレビで!タナカヒロカズやっていましたね!」と言われた。
②TBSの『情報7daysニュースキャスター』で、生中継が行われ、
ママ友からも夫の切り張りがLINEで届いた。
これらのつながりもまた、この日行かなければ与えられなかったもの。
すべてのことは神に発し、神に至る。
ギネス認定はならなかったが、感謝だった。
by 桜子




