絵本作家・五味太郎氏が語る「休校はチャンスだぞ」ガキ向けメッセージが秀逸!

朝日新聞さんのインタビュー記事が素晴らしすぎて、シェアせずにはいられない。全文無料開放中でしたのでコピペを失礼します。m(_ _)m

朝日新聞 2020.4.14

 突然の休校から学校再開と思ったら、また休校――。新型コロナウイルスを巡り二転三転する状況に、すっかり疲れている親子も多いのでは。しかし、絵本作家の五味太郎さんは、愛情を込めて「ガキ」と呼ぶ子どもたちへ、「これはチャンスだぞ」と呼びかけます。

本当は何がしたい?  問えるとき

 ――急に学校が閉められて先の見通しも立たず、大人も子どもも心が不安定になっていると感じます。

それじゃ、逆に聞くけど、コロナの前は安定してた? 居心地はよかった? 普段から感じてる不安が、コロナ問題に移行しているだけじゃないかな。こういう時、いつも「早く元に戻ればいい」って言われがちだけど、じゃあその元は本当に充実してたの?と問うてみたい。

■子どもに失礼

 おれはもともと、今の学校や社会は、子どもに失礼だと思ってる。

 ――失礼、ですか。

 子どもにとって教育は「権利」だと憲法に書いてあるのに、6歳になったら必ず小学校に行き、しかも学校も先生もほぼ選べない。おれの娘は2人とも途中で学校に行くのをやめたけど、学校に向いてる子と向いてない子、あるいはどっちでもいい子がいる。

学校に行きたくない子どもに親が行きなさいというのは、子どもが「お風呂が熱い」って言ってるのに、親が「肩までつかって100まで数えなさい」というようなもので……。

 ――耳が痛いです。

 そうでしょう。これに耐えれば卒業証書、修了証書、退職金と続いていく。で、疲れちゃって、考えるのをやめていく。それを繰り返しているうちに、自分が何がしたいかわからなくなっていく。わくわくしながら仕事に行ってる人ってどれぐらいいるのかな。

 ――子どもの邪魔をしないように、大人が気をつけることは何でしょう。

 例えば、子どもが絵を描いてるわきに行って「なに描いてるの? 上手ね」なんて言わないこと。ピカソに対してはそう言わないでしょう。それはその子個人の絵なんだから。

 そんな大人にいっぱい来られて、「お花かわいいわね」と言われたりしてると、めんどうくさくなって、ウケるものを描いてしまう。大人がやりがちなミスです。

ガキたちには、むしろこれがチャンスだぞって言いたいな。心も日常生活も、乱れるがゆえのチャンス。

■本質はっきり

 ――チャンス?

 だって、学校も仕事も、ある意味でいま枠組みが崩壊しているから、ふだんの何がつまらなかったのか、本当は何がしたいのか、ニュートラルに問いやすいときじゃない?

 働き方も国会も、色んなことの本質が露呈しちゃっている。五輪延期も、オリンピックより人の命って結構大事なんだなとやっと再確認したんだろうし、優先順位がはっきりしてくる。

感染者が何人、株価がどう、と毎日ニュースで急カーブのグラフばかり見せられて、グローバルと言っても、心でグローバルしてたんじゃなくてお金がグローバルしてただけなんだなとしみじみ思うよね。

 こうなると、世界の全体像は誰もわからない。せっかくなら、前よりよくしましょうよ。

 ――そうわかっていても毎日ギスギス、オドオドしてしまいますが……。

 いまは、子どもも大人も、本当に考える時期。『じょうぶな頭とかしこい体になるために』という本を書いたことがあるけど、戦後ずーっと「じょうぶな体」がいいと言われてきた。それはつまり、働かされちゃう体。「かしこい頭」っていうのは、うまく世の中と付き合いすぎちゃう頭で、きりがないし、いざという時に弱いからね。今こそ、自分で考える頭と、敏感で時折きちんとサボれる体が必要だと思う。

心っていう漢字って、パラパラしてていいと思わない? 先人の感性はキュートだな。心は乱れて当たり前。常に揺れ動いて変わる。不安定だからこそよく考える。もっと言えば、不安とか不安定こそが生きてるってことじゃないかな。

(聞き手・田渕紫織)

*ごみ・たろう 1945年生まれ。『きんぎょが にげた』『みんなうんち』など400冊以上の著書がある。エッセーに『大人問題』など。