働く女の涙(マミートラック)

先日、クライアント先に出向いて、打合せをしていたら、
クライアントが泣いた。

その理由はこうである。
私は、女性クライアント(既婚・子持ち)と2人きりになったのをこれ幸いと思い、
兼ねてからの疑問をぶつけたのだ。
すなわち、“働きながら子育てするジレンマ(マミートラック)”
をどう乗り越えているのかと。

彼女はパッと見た目、独身に見間違うくらい、生活感がなく可愛らしい女性なのだが、
実は二児の母であり、その悩みはたぶんに彼女を襲っていたらしく、
子供が小学校にあがってからはフルタイムで頑張っている、と打ち明けながらも、

『子供も分かっているみたいで「ママ頑張って」と応援してくれるの』

と声にして言った途端、彼女の瞳が涙でいっぱいになり、
しばし、私は無言になった。

・・・わかる、わかるよ

という気持ちと、

あなたもでしたか、

の心境であった。

働きながら子育ては大変だ。
言わなくても、その苦労がよく分かった。
マミートラック(出世できなくなる)は、今の日本だと、私たち女性は飲みこむべき事象なのである。
解消する仕組みや、英断してくれるトップ(社長)はそうそういない。

*  *  *

そういえば、私が育児休暇から復職したとき、NTTグループのある社長が(既にリタイア)こんな話をしてくれた。

“僕の時は、自社の女性社員を出産後(頑張りつづけていたから)すぐに部長に引き上げたよ。彼女はえらく恐縮していたけどね、そういう人事も必要なんだけどねえ”

まあ、働くワーキングマザーの誰もが引き上げられる能力があるとは言わないが、残業しないで働くママにも出世できるチャンスがあったら、後ろに続く私たちはどんなにか励まされることだろう、と思うのだ。