銀座ランチで春休み突入

子どもが春休みに入ったので、思いきって会社を休んで、銀座に来た。

中央区銀座は、日本の贅が結集する街だが、私にとってかつての職場だ。ランチは前の晩に下調べしたが子どもに合うかピンと来ず、三越のはす向かいにある銀座四丁目のル・カフェドトール辺りで済まそうかと思ったら、娘がテラス席のサラリーマン群を見て、顔を曇らせた。

ならば、と中央通りを二丁目へ向かって歩くと、「ママ、ここならいいんじゃない?」と表看板を見て、娘が言う。おっ、なかなか、いいセンス。ここなら私も好き。銀座風月堂だ。

ゴーフルで有名な風月堂

風月堂は、私が大卒後すぐ勤めた広告代理店で、よく上司に打ち合わせと称し、連れていかれた。半螺旋の階段を上がると、私たちは、2つの椅子が中央通りを向いている窓際席を薦められた。座ってみると真正面に、ティファニー、文具の伊東屋、ブルガリが見えた。懐かしい。不思議なことに、すべての店舗に覚えがある。婚約指輪を買ってもらったティファニー(その後破談)、先輩のお使いで何度も買い物に来させられた伊東屋、時計の修理で訪れたブルガリ。

 食事が運ばれてきて、お昼を頂いている最中、突然私は叫んだ。

「あー、幸せ!!」

 言って、すぐ耳を疑った。いま、なんと?・・・幸せ、って言ったよね、私??

ワハハハハ!!!

大笑いしたら、傍らで娘が目を白黒させた。「ママ、どうしたの?!」

 自分で自分がおかしかった。こんなことで幸せを感じるとは。童話メ―テリンクの「幸せの青い鳥」のように、幸せって、こんなすぐそばに転がっているんだとベタに驚いてしまった。

日頃「感謝」はよくしているが、幸せは気づきにくい。不満や不安の方が、感情が大きいからだろう。とっさに「幸せ」、と発したことに驚いてしまった。何を幸せと感じたのか、よく分からなかった。料理に?風月堂に?銀座にいる自分に?娘と過ごす時間に?

おぼろげに辿り着いた答えは、おそらく、銀座の風景を眺めているうちに、今こうして母となり、子供に食べさせている自分であることが、うれしかったんだろう。
色んな過去があった。
ラグジュアリーな場所で過ごすことが好きな私も、神さまはとうの昔から知っておられ、現在、住まいを渋谷に構えていることも、ご存知だ。そして、そんな私の夫は、ミーハーな私に「良かったね」と寄り添ってくれる人である。

ひよこが、生まれて初めて見た物を親と思うように、職場や職業も、その後の私に多大な影響を与えた。

神様の大いなる計画の中で、これまで歩んだきていた。そう気づいたことが、また何よりうれしかった。