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ニュージーランドの家探し~短期移住4

ニュージーランドの家探し~短期移住3の続き。
白いワンピースを着た初老のエルは、私にとって神々しかった。


しかし、彼女が私たちに与えた部屋は、バックパッカーでもない私たち家族にはしんどかった。
そこはブラジルや、東南アジアなどの移民が住む共同フロアーであった。
でも、ともかく感謝すべきだ、と私たち夫婦は考えた。

それまで私たちは、良い家に住んでばかりだった。
だから、まずは与えられたことに感謝、と。

けれど、その後、エルは言った。
「二泊で150ドル。あとは交渉ね。それでいいか考えておいて」
私はてっきり、彼女の善意で家に泊まらせて頂くのだ、とばかり思っていたのでやや驚いた。
しかし夫は「そうなる可能性がある」と私に事前に言っていて、読みがあたった。


しつこいが、私たち夫婦は、感謝すべき、感謝すべき、と心の中で呪文のように唱えていた。

けれど、悲しいかな、本能は何か言っていた。私の心が泣いている。
私は、この家探しの過程において、実に多くの方の善意に遭う。
そして、地元の教会の週報に「日本人家族が困っている」とお願いしていないのに、取り上げられるほどになって、ぽっと出の私たちがこのような善意に遭うとは、と感動した。
が、物件においては、お会いするクリスチャン家主が、揃って、お金の話になると、いきなり、
「あら、いくらかしら?今まで考えたことなかったわ!人に部屋を貸したことがなかったから」と言って、
たとえ旦那さんが、「週300ドルもいらない」と首を振っても、奥さんは「市場相場は500だから、一泊100ドル、一週間なら泊数が多いから500」と、ビジネスウーマンになることが、同じクリスチャンとして、どうしても、私の理解に苦しむ所になった。

彼女は、私たち家族が、困っているのを知っている。
クリスチャンであることも知っている。
たった一泊でも100ドル払え、と言う所が、非常に理解に苦しむ。
わが家なら、あるいは、うちの主人なら、「お金はいらない」と言うだろう。


これからは私も、うちに泊まるなら一泊一万円ね、というべきなのかしら?
と、私は夫に思わず聞いた。

でも結局学んだことは、クリスチャンだから、ってその人は神様じゃない、ということだった。
つまり、「人を」頼ってはならぬ、と学んだ。

そして、クリスチャンとは、神様を信じている人を指すが、
一口に言っても、その人の価値観や考え方、またその信仰は異なっているわけだから、
私たちはたとえ、クリスチャンの人だといっても、無邪気に喜んではいけない、と改めて学んだ。


そういうことは、日本で、それなりに分かっているつもりだったが、
異国にいて、つい、優しくて、祈ってくれる人がいると、私などはすぐ無防備になって油断して、なんでもペラペラ喋ってしまっていた。

私は、間違いだった、と気づいた。
そうだ、人でなく、神だけに頼ろう、と改めて学んだ。
で、話を戻す。
場所は、エルに案内された私たちの小さな部屋。


ふと見ると、夫が一生懸命、スマホを触っている。
何をしているかと聞くと、
「同じお金を払うなら、もっと別の選択肢があるんじゃないの?」と言う。


それで実は私も同じ気持ちだったため、急いでパソコンを開いた。

「一つ、心あたりがあるの。私たち家族に4月まで滞在してもいい、という方が、クリスチャンじゃないけど、いるの」

その方は、Airbnbを通して、私たち家族に、スペシャルオファーの金額を提示してくれていた。
が、31日にその人の家を予約しようとすると、サイトから消えていた。

けれども、幸いだったのは、最後の最後に、Airbnbシステムでやり取りをしていたので、履歴が残っていて、メールを送ってみると、それは確かに彼女に届いていた。

それで、なぜサイトから消えたか問うと、Airbnbで嫌なことがあった、もう掲載をやめる、と書いてあった。
そして以前彼女は、私たち家族に、「一泊80ドルで泊らせたいけれど、システムを経由すると、どうしても高額になる」と嘆き、ゆえに、彼女の家に泊まれないでいたわけだが、緊急時、知恵が働く。

私たちは、互いの住所、電話番号、メールアドレスはAirbnbで伝えられなかったので、代わりにこう書いた。

「今から会えますか?〇〇ストリートの一番端に、15分後なら車で行けます」

驚いたが瞬時にレスが来た。

「オーケー」


そう、そして今、私たち家族は、住む家を見つけた。時間にして、31日16時だったか。
まさにギリギリだった。

その家には、猫5匹がいて、「猫があなたたちに慣れるまで6か月かかるわ」と玄関先で、言われた。
Airbnbでトラブルを経験したばかりの家主エヴァは、疲れた表情をして、私たちを知ることに疑心暗鬼になっているようだった。
が、猫はすぐ、私や娘の足元をスリスリしたので、彼女は私たちをOK、と認めた。

そうして私たちは、まず、お互いを知るために、1週間住んでいいことになり、泊ることになった。



が、話はそこでハッピーエンドにならない。

今度は、エルから連絡が来た。
「今どこにいる?」
それで、私たちに、「泊るかどうか、考えておいて」と言っていたにも関わらず、
私たちが泊まらないと分かるや否や、「失礼だ!」と騒ぎ始め、怒っていた。

私たちは、一生懸命、お礼を言い、失礼のないように、そしてもちろん、ごめんなさい。と詫びたが、あきらめず、また執拗に「2日から泊まるように」と追い打ちをかけてきた。


私は家が与えられた喜びよりも、それまでに体験してきた、人の善意の裏にある「偉大なお金のパワー」に、圧倒され、大きな驚きと共に悲しかった。お金はかくも、人を変えてしまう。いいアイデアでしょう、といったエルは、お金あってこその優しさだったのか。
誰もかれもが、お金、お金、と言っているように私には思えて、本当に悲しくて切なくてたまらなかった。


エヴァ同様、私もまた、知り合う他人に疑心暗鬼になってきて、この家に安らげず、眠りについた。

by桜子

追伸①小さな池には、亀が5つもいて、庭にはインコ、ハーブ、コーヒー豆、プラム、バナナの木が備わっている。オークランド市内にしては、自然を味わう庭があり、まだ一度も利用していないが、プールやジャグジーもある。

神様が私たちに与えてくださった家は、結局のところ、こういう家だった。

追伸②政府が通学自粛を取り下げたので、2月3日から学校スタートになりました。
娘は急な変更でストレス、と落ち込んでいますが、お祈りよろしくお願いします…。

追伸③日本一毛刈りが速い男、大石駿FromNZに書いた、古田稔さんに連絡をくださった方がおられ、古田さんが、とても喜んでおられるようでした。メッセンジャーで、稔さんはやり取りが出来るようですから、ぜひお見舞い応援メッセージを、示された方は(祈ってから)お送りされてはどうかな、と思います。:)


このブログを読んでくださっている方に、心から感謝申し上げます。m(__)m
私たちの旅(家探し)は、まだまだ続きます…。