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フィンランド式精神医療、オープンダイアローグ(開かれた対話)⑥

 ■ここまでのストーリー■
精神科医の森川すいめい氏から、オープンダイアローグを教わったワーママの私。実践演習をやると、思いがけない他者からの告白に汗びっしょり。(詳細:フィンランド式精神医療、オープンダイアローグ(開かれた対話)⑤

 1980年代にフィンランド西ラップランドにある精神病院、ケロプダス病院で開発された「オープンダイアローグ」(開かれた対話)は、社会的な革命を起こした。
 当時、欧州では共産主義政権が次々と倒され、一連の民主化革命が起こっていたが、その波が、精神的な病を持つ人にも民主主義を与えた。
 なにしろ、「頭がおかしい人の話は聞いても無駄」の常識を覆し、彼らの一生を、入院暮らしから、解放させたのだから(約8割が回復)。

さて、この魔法のようなオープンダイアローグと日本の精神医療の現場での親和性は今日どうか、というと、森川すいめい著「感じるオープンダイアローグ」によれば、「今のところ変わる気配はない
 皆さん、知っていましたか?日本は、世界の精神科病床数の1/5世界最多の精神科病院を持ち、長期入院者が世界一多い、ということを。私は全く知りませんでしたよ。なんだかこれって、日本の司法制度が北朝鮮並み(元エリート裁判官が日本の裁判所の実態を暴露!)と同じ。異物、と認定したものは徹底的に排除する国=日本だったんですね…。


 さて、前段長くなったが、(フィンランド式精神医療、オープンダイアローグ(開かれた対話)⑤))の続き。参加者から、セミナーで内密な告白を聞いて私は自分なりの感じた想いを吐露して、汗びっしょり…。

その話を、わが家に来た高校の同級生に私は、熱心に話していた。
 「辛い過去の話を聞けば、そりゃあ、聞く方は疲れるよね。分かる。で、桜子はどうなの?もう二度と、その人の話を聞きたくないって思ったの?」

 この問いは、私にとって大きかった。すぐさま、「いや、機会があれば、うちにその人を呼んで一緒に食事したいなと思っているけども…」と頭をポリポリ搔きながら、私は考えていた。
 聞きたくない、とは思っていない。それはそのあとに、その人が喜ぶ姿を見たから、つまり好転に向かったからそう思えたのかもしれないが、その人が、対話を重ねることでもし、もっと笑えるなら関わりたいな、と思っていた。

 実際、私がその人を自宅に招くかは疑問だ。だが、そういう心境になったのは確かだ。演習前日までの他人を、そこまで身近に思える不思議な力がオープンダイアローグにあり、“実践してみなければその境地はわかるまい”と最初の段階で書いたのは、そういう理由だ。

 お互いを知り合い、痛みを分かち合っていく。
昨今の、コロナだから、他者とソーシャルディスタンス必要だから、同居する家族以外のつながり薄こそ善であり、安心・安全と錯覚させる日本社会。その中で、オープンダイアローグを体得する、ということは、他者とのつながりを濃くさせることで、日本社会に真っ向から勝負を挑むような感じがする。

 
 筑波大学医学医療系保健医療学域社会精神保健学の、斎藤環教授は、これを、「日本の精神医療のパラダイムシフトとなるケア手法」と評している。
 2021年5月、WHO(世界保健機関)の地域精神保健サービスに関するガイダンス『人間中心の、権利に基づくアプローチの促進』において、グッドプラクティスの1つとして、国際的に認められた。


 是非、これを読んだ人には関心を持ち、開かれた対話を、大事な人や、そうでない他者ともやってもらえたらいいな、と思う。

※次回「トラウマインフォームドケアとオープンダイアローグ」へ続く。