親指姫を気に入ったモグラは、毎日遊びにきます。
ある日の事、親指姫はけがをして倒れているツバメを見つけました。
やさしい親指姫は、毎日ツバメの世話をしました。
「どうか元気になって、もう一度歌って。わたし、あなたの歌が大好きよ」
春になり、すっかり元気になったツバメが親指姫に言いました。
「あなたのおかげで、また飛べるようになりました。さあ、一緒に南の国へ行きましょう。南の国は、とってもいいところですよ」
「ありがとう。でも、いけないわ」
「どうして?」
「だって、わたしがいなくなったら、お世話になった野ネズミのおばさんがさびしがります」
「・・・そうですか。では、さようなら」
ツバメは親指姫に礼を言うと、南の国へ飛んでいきました。
夏が来ると、野ネズミのおばさんが言いました。
「親指姫や、いい話ですよ。なんとお金持ちのモグラさんが、あなたをお嫁に欲しいんですって。よかったね、モグラさんに気に入ってもらって。秋になったら、モグラさんと結婚するのですよ」
親指姫は、ビックリしました。
モグラはきらいではありませんが、モグラと結婚したらずっと地面の底で暮らさなければなりません。
モグラは、お日さまも花も大きらいだからです。
夏の終りの日、親指姫は野原で言いました。
「さようなら、お日さま。さようなら、お花さんたち。わたしは地面の底に行って、もう二度とあなたたちに会えません」
親指姫は悲しくなって、泣き出しました。
その時、空の上から聞き覚えのある声が聞こえました。
「親指姫。お迎えに来ましたよ」
あの時助けたツバメが、飛んできたのです。
「聞きましたよ、モグラがあなたをお嫁さんにしたいと。さあ、今度こそ一緒に行きましょう」
「ええ、行きましょう」
ツバメは親指姫を背中に乗せて、大空を飛んでいきました。
何日も何日も南へ飛んで、着いたのは花の国です。
ツバメは花の上に、親指姫をおろしました。
花の上には、親指姫と同じくらいの大きさの男の子が立っていました。
「ようこそ、かわいい娘さん」
この男の子は、花の国の王子さまです。
「さあ、これをどうぞ」
王子さまは、親指姫の背中に羽をつけてくれました。
それから親指姫は、花の国の王子と結婚しました。
二人は花から花へと飛びまわりながら、いつまでも幸せに暮らしました。
おしまい