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crop unrecognizable male doctor with stethoscope

残念な医者

母がわが家に来て、1週間。
明け方、お手洗いに起きた母が、また寝室に戻るドアの音が聞こえ、布団の中で私はホッとした。

この7日間は、年末に引き取った時と今の母の違いに驚かされていた。
今日、起きてこないことをみると、少し落ち着いたか?

母は昨年末、妄想を言うようになった。おかしいと思い、主治医の所に連れていくと、うつ病だと断言する。

副院長「ちょっと精神科だね!!!」

母  「ええーっ!!そんなあ・・・」

副院長「僕には無理!ちょっとこういう状態で診てきたけど、パーキンソン病のスペクトラムで説明がつかない。精神科行って!」


あれから4か月たった。
父に内緒で、私は昨日、母をこっそり病院へ連れて行った。
夫が見つけてくれた、脳神経内科だ。

医者は言った。

「うつ病では、ありませんね」

ですよね?
ですよね?
だから、私、精神科でもらった薬、うちに来てから飲ませてないんです。

「いいと思います」

「それから、脱水症状と栄養状態が悪くて、せん妄がひどくなっている可能性があります。絶対やらなくてはならないのは、理学療法士によるマンツーマンのリハビリです。身体が固くなっています」



採血と心電図を4月3日とることになった。

母は診察中、医師がじっくりと私の話を聞いて問診するので、何度も私を叱った。
が、医者は言った。
「初診は、長くなるものだから、いいんですよ。」

そして、母が早すぎる別れを試みてもできなかったことを吐露すると、
「それは言っちゃ、いけないよ」
と優しく語り、
「生きたくても生きられない人がいるからね」と言ったら母もすぐさま、

「そうです」
と力強く、はっきり答えた。


彼女は、わかっている。
生きなくてはならないことを。
この先、どんなにみじめになろうとも、命ある限り、生きなくてはならないことを。

医師は優しく言った。
「前向きに・・・ね」


私は母の手を握り、暗い夜道を歩いて家路についた。

天の下では、何事にも定まった時期があり、すべての営みには時がある。(伝道者の書3:1)


by桜子

♯介護 ♯難病 ♯にぎやかな暮らし ♯仕事と育児と介護の両立