オランダの首都アムステルダムから車で東へ1時間、ワーヘニンゲン市にある「フードバレー」。
バレーといっても谷間にあるのではない。「食品・農業・健康をテーマとした専門知識の集積地」との意味合いだ。緑豊かな木立の中、低層の建物群は目立たない。だが、ワーヘニンゲン大学(Wageningen University) を中心にハインツ、キッコーマンなど世界中の食品関連企業やベンチャー企業1440社以上の研究施設がひしめいている。科学者同士が交流し、機能性食品、バイオ、農業・環境など「食」に関する様々な共同研究開発に取り組んでいるのだ。オランダの食料自給率は6割足らずだが、乳製品、ビールなど農産物輸出は米、仏に次いで世界第3位。産官学の連携で、ここ数年急成長しているフードバレーは、そんなオランダの国力を象徴するようだ。
この夏、北海道国際経済交流会会長の森田哲明さんは現地を訪れた。「日本の食料自給率は4割で、農業従事者も減少してきた。安全な食品を安定供給するために、北大、帯広畜産大など研究機関が多く、食料基地でもある北海道に日本版フードバレーをつくれないか」と強く感じたという。北海道の経済団体も12月、この地を視察する。
日本でも近年、大学から民間企業への技術移転を進める法制度が整い、知の活用へ環境が整ってきた。大学発の技術を生かして起業するベンチャーも増えている。
農漁業の新鮮な素材、雪と氷による食料の貯蔵技術。それに、高付加価値を生むハイテク集積地が加われば……。北海道の未来は大きく拓(ひら)けていくに違いない。