春物の洋服と2~3のセーターしか持っていかなかった私。
ホストファーザーのピートが、グランドキャニオンは真冬の零下だから
その格好ではとても無理、と言う。
ニタリと笑って、
「きみがどうしても、と言うなら祖母のミンクコートを貸してあげてもいいよ」
と言うので、私もニタリと笑い返した。
「dare」(どうしても)
かくして、グランドキャニオンへ、毛皮のミンクを着て出かけることになった。
旅行者の多くが立ち寄る場所だから、大半の人はラフな格好だろうに、
フォーマルウエアで行くなんて、たぶん、私ぐらいなもの。
けど、ゴージャスでいいじゃない?
羽織ってみろ、といわれて着てみたらすごく似合うと絶賛され、
私も気分良くなって言われる通りに写真を撮った。
やっぱり、この服を着て出かけるんなら、
ボーイフレンドの一人や二人ぐらい、捕まえてこないとね、とからかわれた。
(※みんなは私に特別な人がいないのを知っている)
しかし、この毛皮を着るにあたって、
動物保護団体からクレームをつけられたらどうするか、という話になり、
ホストマザー(アリス)からは、
「もしも何かあったら、『私のものじゃない』と主張しなさい」と指導され、
私は言った。
” Don’t worry. I’ll say EIGO WAKARIMASEN!!”
(=心配しないで、エイゴワカリマセン!!って日本語で言うから)
すると、みんな、ゲラゲラ笑った。
しかし、ミンクのコートを着るとなると、次に問題となるのが帽子や靴である。
アリスが黒ブーツを貸してくれ、さらにミンクのコートより高額だという、
カザフスタンの毛皮帽子を貸してくれた。
「でも、アリス、私が出かける先は宮廷じゃないのよ。
たかが、山に出かけるんだけど・・・」
と、私が言ったら、
アリスも、吹き出しながら、確かに、と言うので、
結局、毛皮と合わせてもおかしくない、そこそこの帽子を貸りた。
それで、行ってきたグランドキャニオン。
単独でツアーに参加したら、車中でサンフランシスコ在住のフィリピン人一家と仲良くなり、
「Sakurako!come,come!」とどこに行くのにも終始呼ばれて、行動を共にした。
こうしてみると、さながら、私ったら、フィリピーナ。