京都タクシーと私(その1)

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今回京都へ出張するにあたって、ふと思い出した。
そもそも、生まれて初めて泊まりがけで出張した先は、京都であった。

広告代理店に勤務していた頃、上司が私に言った。

「仕事が終わったら、観光してきていいよ。
 タクシーだったら、いくら乗っても構わないから。
 ただし、領収書をとっておけよ」

それで、私は言われたとおり実行すべく、考えた。
097.gif〝タクシーを使って効率よく観光するには?” 
すると「観光ハイヤー2.5時間 15000円」という看板が目についた。
京都には時間制のサービスがあることをそのとき知った。

黒塗りのハイヤーが、私を乗せて京都の祇園をかけめぐる。
右へ左へ、車が静かに走り出し、23歳の私は居心地が良かった。
白い手袋をはめた運転手さんが、大人のように私を扱い、丁寧に話しかけてくれる。
観光名所に停まれば、彼も私と共に降りたって、白い手袋をはめたまま、
うやうやしく、お付きの人らしく、私に傅いてくれる。

(なんだか、すごく、いい気持ち・・・!)

境内を見渡せば、、このような観光をしているのは自分だけのようであった。
心なしか視線も感じて、私は書きながらそのわけに今気付いたのだが、
そうだ、あれは、観光タクシーではなくて、ハイヤーだったからだ・・・!

しかし、そんなことは、その時は気づかなくて、優雅な時間とラブリーな体験に、
単純に喜んでいた。

後日。


 「バカ野郎!!」
 

と、大きな怒鳴り声が飛んできて、上司にものすごい勢いで怒られた。

 「いくら使ってもいい、とは言ったけど、(領収書が)1枚じゃねーか!
  どうやって、こんな額になったんだ!?」
 
 「え!?観光タクシー!? お前、自分で観光して、そのつどタクシー使えよ!
 こんなんじゃ、領収書、切れねーだろ!!!!」

 そのときの私は世間知らずだった。
 お金の出所や仕組みなんて何も考えず、ただ言われた通りをすればいい、
 と言葉だけを信じていた。

 若かった。

 ・・・本当に若かった。

 いまでも思い出す、京都タクシーの思い出である。  by桜子

 追伸:結局、自費清算しました・・・。

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