「負け犬の遠吠え」酒井順子氏の柿


主人が娘に「はい、コレ」とたった1つの柿が入ったビニール袋を手渡した。

「わあ、柿?!」と、娘。

「なに、それ、Aくん(社員からもらったの)?」と、私。
深い意味もなく、何気なく聞いた。いつもならスルーする話だ。だが、ここで夫が言った。

「サカイジュンコさんっていう人。桜子、知ってるかな?」

頭の中にサカイジュンコ…と書いた。知らぬ。

「負け犬の遠吠えっていう(本を書いた)」と、主人の返答を聞いて、合点がいった。それはもしや、週刊文春で連載してる、元博報堂の、私がちょっと憧れている「酒井順子?!えーっ?!すごーい!!!」

最近、主人は名のしれた人と会っている。いや、呑んでいるのだろうか?
よくわからないが、それもこれも、渋谷のラジオ番組に毎週火曜日、レギュラー出演しているせいだ。今秋から頼まれたラジオ出演は生放送で、多忙な夫にその定期活動はあんまりだ、と私は当初、反対していた。しかし、にわかに羨ましく見えてきた。

「来週は、〇〇〇〇さんと会うんだよね」

夫がボソッとつぶやいて、こういうとき私が感動するのは、夫がその話に浮かれるわけでもなく、自慢げに語るわけでもなく、まるで隣の佐藤さんと会うかのごとく、淡々としている点である。

平常心、大事なり。見習うべし、ミーハー桜子。