溺れる人の話

湖で、大好きなあの人が溺れている。

かなづちだよ、あの人!急いで助けなくちゃ!

ああ。でもあんな湖の真ん中で、浮き輪は届かないし、ボートもない。
ああ。あんなに水しぶきを上げて、手足をばたつかせて、もがいてる。

「助けて、助けて。」

必死にもがいている。

助けるよ、助けるよ、あ、でも、どうしよう。
いま私が飛び込んでいっても、あの人のほうが大きすぎる。
助けたいのに助けられない。だって、
私が手を伸ばした瞬間に、その力に引き寄せられて、一緒に溺れてしまうもの。

どうしよう、どうしよう。

もがいて、もがいて、もがいて

とうとう

あの人の力が尽きた。

ふっと身体が沈みはじめる。


いまだ!!!

待っていた、唯一の救い出すチャンス!

天からの助けもそういうときに発揮され、

また天の神様もそういう方であるという話を思い出した。