著書:海老沢泰久、 出版:文春文庫 ★詳細はココ
内容:本物のフランス料理をもたらした辻静雄の半生を描く伝記小説。
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単なる物語かと思いきや、実存の人物を描いた小説。
辻静雄が新聞記者から転じて義父の関係で料理学校の副校長になる。包丁すら握れない素人が次第に日本の飲食産業を変える要人へと変わりゆく姿はさながらアメリカンドリーム。読む者に挑戦への勇気を与える一冊。その途中には、彼の行く手を阻む者、信頼していた者の裏切りなど、いつの時代にもある困難が切ない一方で、彼を取り巻く周囲の愛が心を潤す作品。
■これは次の人にお薦めです。
1)美食家、ガストロノーム(ガストロノミー=美味学(ブリア・サヴァラン『味覚の生理学』))
2)フランス及びフランス料理好き
3)新規開拓、チャレンジ精神旺盛
■辻静雄さんはこんな人。
東京、大阪、フランス本土に12のグループ校を持つ、世界最大の調理師学校、辻調理師専門学校の総帥にして、戦後、真のフランス料理を日本に持ち込み、飲食業界に多大なる影響を与えただけでなく、フランスと日本の架け橋であった人物。フランス料理の神髄を究めるべく三ツ星レストランなど食べ歩きに1000軒。本物を求め、食べ続け、舌を磨くことに専念し、ひいては、生涯4万5千人もの弟子を育て上げる。フランス料理界に貢献した人物に贈られるMOF(フランス最優秀料理人賞名誉賞)を、日本人で初めて受賞。
■私はココが印象に残りました。
全てを成し終えた辻静雄が後半で放つ一言
「結局、人間にできることは、自分がやってきたことに満足することだけなのだ」
ソロモンの記述とかぶりました。
「エルサレムでの王、ダビデの子、伝道者のことば。空の空。伝道者は言う。空の空。すべては空。日の下で、どんなに労苦しても、それが人に何の益になろう。一つの時代は去り、次の時代が来る。しかし地はいつまでも変わらない。日は上り、日は沈み、またもとの上る所に帰って行く。( 中略・・・)人には、食べたり飲んだりし、自分の労苦に満足を見いだすよりほかに、何も良いことがない。」
辻静雄が言ったこととソロモンが言ったことは似通っているよね?
(貸して欲しい人、貸してあげます。by桜子)